食事に伴う汗について
こんにちは、弘邦医院の林です。 今日の診療は平常通り、午前・午後です。 本日のテーマは食事に伴う汗です。 激辛のカレーやラーメンを食べると顔や頭の中、 唇の上や鼻の頭などに汗をかきます。なかには、 汗の量が異常に多く、普通に食事をしただけでも 滝のような大量の汗を滴らせる人もおられます。 普通、こうした汗は、辛味成分が原因です。辛子の主成分は カプサイシンという物質です。これを含んだ食べ物を口にすると 口腔内にある高温に反応する温度センサーが刺激され、 その信号が神経回路を介して痛みと熱の感覚を脳に伝えます。 ところが、その途中で脳の体温調整中枢から顔の汗腺に 下向する発汗神経を刺激して、反射的に顔に汗が出るのです。 激辛ラーメンのスープを飲むと汗の量が一層多く出るのは、 カプサイシンの「痛み」とスープの「熱」がダブルで 高温センサーを刺激するからです。 そもそもこのシステムは口腔内を極端な高温などから 守るためのものですが、頭をスッキリさせる作用があります。 顔や頭に汗をかくことで、汗をかいた部分の皮膚が冷却され、 冷えた血液が脳に流れ込みます
失神について
こんにちは、弘邦医院の林です。 今日の診療は平常通り、午前・午後です。 さて、本日のテーマは失神です。 「気絶」「気を失う」などさまざまな呼び方がある失神は、 学生が朝礼などで起こす失神のイメージが強く、 中高年には関係ないように思われるかもしれませんが、 間違いです。トイレやお風呂などで多くの中高年が 失神してケガをしたり、命を落としたりします。 失神とは、脳全体の血液の流れが低下し、 一時的に意識が失われることを言います。 普通は失神してから数秒から数分以内に後遺症を 残すことなく回復しますが、けいれんをおこしたり、 大怪我をしたりすることもあります。 失神の原因はさまざまです。心臓の病気が 原因になることもあれば、自律神経の調整がうまくいかず 失神することもあります。あるいはてんかんや 脳卒中といった脳や神経の病気、低血糖によっても失神はおこります。 冬はとくに失神することが多いので注意が必要なのです。 例えば、中年男性に多い失神に、排尿失神があります。 お酒を飲んだ日の夜中に尿意をもよおしてトイレに起きて、 排尿中あるいは排尿後に失神が起
剣道について
こんにちは、弘邦医院の林です。 今日の診療は平常通り、午前・午後です。 さて、本日のテーマは剣道です。 私は剣道の経験はありませんが、剣道は生涯スポーツとして 優れた点がいくつもあるようです。 他のスポーツと比べて高齢者でも続けられること、 大声を出せること、剣道教室など他の年代との交流が あること、出場した大会があることなどです。 実際、京都学園大学健康医療学部の研究者がまとめた 「高齢の剣道高段者における健康・体力と生活状況」という論文には 興味深いことが書かれています。京都市内在住の60歳以上の3段から 8段までの275人の生活状況を調査し、同年代の一般男性のうち 運動をしている群(運動群)としていない群(非運動群)と比べたものです。 それによると、開眼片足立ち,10 m 歩行速度,BMIを除けば, 身長や体重などの体格面や垂直跳び、握力などの体力面での値で 最も高いのは剣道群で,以下運動群,非運動群の順だったそうです。 また、剣道群275名,運動群213 名,非運動群81 名における 生活状況調査については、日常役割機能、身体の痛み、活力
テレビゲームについて
こんにちは、弘邦医院の林です。 今日の診療は平常通り、午前・午後です。 さて、本日のテーマはテレビゲームです。 クリスマスが近づき、プレゼントとしてテレビゲームをお願いされている人も多いのではないでしょうか? なかには「ゲームを買い与えると注意散漫でキレやすくなるのでは」と心配されている方も多いと思います。 では、テレビゲームに熱中すると本当に「注意散漫でキレやすくなる」のでしょうか。 実は必ずしもそうではないようです。2000年代の初めに、 メディアで「ゲーム脳」が話題になりました。脳には前頭前野という部位があります。 知性や理性、創造性を担い、感情のコントロールを担当する場所です。 ゲームに熱中する子供は日常的に前頭前野の活動が低下した 「ゲーム脳」状態とする仮説が注目されたのです。 ところがその後、この仮説は批判され、認知能力を調べると前頭前野を 使う課題はゲーマーの方がむしろ成績が良いなど多数のメリットが報告されているのです。 世界的科学雑誌「ネイチャー」に一人称視点のシューティングゲームをする人は 視覚的注意という認知能力が高いことが報
リンゴ病について
こんにちは、弘邦医院の林です。 今日の診療は平常通り、午前・午後です。 さて、本日のテーマはリンゴ病です。 頬が赤くなるためこの名前で呼ばれていますが、 正式には「伝染性紅斑」と言います。 ウイルス性の病気で、原因はヒトパルボB19ウイルスです。 りんご病は、生後半年から患者さんがみられるようになり、 5歳前後をピークとして幼児期の子どもに流行する傾向がある病気です。 患者さんの唾液や鼻水などに触れて、それが自分の口や鼻の粘膜などに 付着したり、飛沫を吸い込んだりして感染します。 感染から10~20日間潜伏した後、頬に赤い発疹があらわれ、 手や足にも網目状の発疹が出ます。 また、成人では頬が赤くなることはありませんが、 風邪にかかったときのように関節痛や全身に倦怠感がみられます。 妊婦さんが感染すると、本人には自覚がなくても、 胎盤を通じて胎児が感染、流産や死産になることがあります。 そんなリンゴ病が流行の兆しをみせています。 国立感染所研究所の患者報告数が33都府県で増加が報告され、 宮城県では警報基準の2倍超が報告されています。 東京都も全国
盲腸について
こんにちは、弘邦医院の林です。 今日の診療は祝日の為休診です。 さて、本日のテーマは盲腸です。 かつてはその働きがよくわからず、ムダな臓器と 考えられてきた時期もありましたが、最近はその重要性が 認識されています。最近話題なのは、 「盲腸を切除すればパーキンソン病を予防できるのではないか?」 というものです。 欧米のパーキンソン病患者160万人以上の データベースを分析したところ、盲腸手術を受けたことのある人は、 そうでない人に比べてパーキンソン病の発症リスクが約19・3%も 低くかったというのです。ほかにもパーキンソン病を発症した人のうち 30年以上前に盲腸手術を受けていた人は、それ以外の人に比べて 発症が約3・6年遅かったという分析も明らかになっています。 パーキンソン病は、国の難病に指定されている病気です。 その多くが原因不明の神経変性疾患で、手足の震え、歩行困難、 発語障害、睡眠障害、うつ症状、認知機能障害、痛みなども表れるといわれています。 盲腸にはパーキンソン病の発症に関わる、特殊なたんぱく質の 材料がたまっていることから、切除が予防
靴ずれについて
こんにちは、弘邦医院の林です。 今日の診療は平常通り、午前・午後です。 さて、本日のテーマは靴ずれです。 新しい靴を履いたりしたときにできる靴ずれですが、 思わぬ病気を発症することがあります 。例えば毒素性ショック性症候群という病態です。 突然の高熱、全身の紅斑、嘔吐、下痢などの全身症状を起こします。 傷口や手や指、鼻など皮膚に普通にいる黄色ブドウ球菌が 作る毒素が引き起こします。ある若い男性の症例が報告されています。 この男性は左足に靴擦れができて水泡が破れたままにしていたところ、 数日後に吐き気やむかつきを覚えたそうです。 病院で診てもらったところ体温が40度近くまで上昇、 眼が真っ赤に充血していました。しかも、左足の水泡の場所から 内またにかけて左足全体に痛みがあり、しびれも訴えたのです。 その後、血圧が急激に低下し、紅斑も出たそうです。 緊急入院後の検査で、この男性は毒素性ショック症候群と 診断されました。幸い、抗菌剤の集中投与で難を逃れましたが、 下手をすると命を失っていたかもしれません。 免疫力のある若い男性ですら、こんなことが起きる
逆流性食道炎について
こんにちは、弘邦医院の林です。 今日の診療は午前エレベーター点検の為休診でした 午後の診察は行います。 さて、本日のテーマは逆流性食道炎です。 お酒を飲むとすぐにゴロ寝してしまう。 気持ちはよくわかります。 しかし、これは逆流性食道炎になりやすい生活習慣です。 逆流性食道炎とは、強い酸性の胃液や、胃で消化中の 食物が食道に逆流して食道の粘膜がただれその一部が 喪失するなどして、胸やけや胸の痛みなどの症状が生じる病気です。 昔の日本人はあまりみられなかった病気ですが、 食事や生活様式が欧米化されることで、急激に増えています。 恐ろしいことに逆流性食道炎は食道がんを発症させる原因だと いわれています。食道の粘膜は扁平上皮、胃や腸は円柱上皮という 粘膜に覆われています。逆流性食道炎などで炎症を起こして傷つけられた 食道の扁平上皮が、胃と同じ円柱上皮で置き換えられたものを バレット粘膜と言います。これが存在する食道をバレット食道といい、 食道がんのリスクが高いといわれています。 健康な人では胃液や胃の内容物が食道に逆流しないように、 食道と胃のつなぎ目に
糖尿病による感染症について
こんにちは、弘邦医院の林です。 今日の診療は平常通り、午前・午後です。 さて、本日のテーマは糖尿病による感染症です。 みなさんは糖尿病というとどのようなイメージをお持ちでしょうか? 太った人がかかる病気、口やのどが渇く病気、オシッコが 泡立つ病気などとイメージされている人も多いことと思います。 しかし、これは半分正しくて半分間違いです。 糖尿病は痩せている人でも発症しますし、 オシッコが泡立ったとしてもそれだけで糖尿病と判断できません。 糖尿病は食事で体に吸収された糖分が、身体のなかで使われず 血液中に高い濃度のまま留まっている病気です。 それが身体のあちこちに悪さをして多くの合併症を発症します。 そのひとつが、感染症です。糖尿病が感染症にかかりやすく 重症化しやすいのは、血糖が白血球や免疫細胞の動きを阻害するからです。 体内に入ってきた病原菌を健康な人のように殺すことができません。 糖尿病の人が感染しやすい主な感染症は、歯周病や風邪や インフルエンザといった呼吸器疾患などのほか、皮膚の感染症、 胆道感染症などです。問題は本来健康な人ならかからな
感染症状況について
こんにちは、弘邦医院の林です。 今日の診療は通常通り、午前・午後です。 さて、今週も平成30年11月5日(月曜日)から 11月11日(日曜日)までに、江戸川区内の医療機関で 診断された感染症状況から、みてみましょう。 まずは法律で全症例を報告しなければならない感染症です。 1類感染症 報告なし 2類感染症 結核12例 3類感染症 腸管出血性大腸菌感染症1例 4類感染症 E型肝炎1例 5類感染症 百日咳2例 (※1類・危険性が極めて高い、2類・危険性が高い、 3類・危険性は高くないが集団感染の可能性がある、 4類・国民の健康に影響を与えうる、5類・国が情報提供などで 感染拡大を防止すべき感染症のこと) 結核は前週の5例から倍増しました。 風疹は前週2例、前々週1例からゼロになりました。 E型肝炎は新たに出た感染症です。 インフルエンザは小岩地区で小児が1例報告され、成人では報告はありません。 咽頭結膜炎は全区で13件報告され、 感染性胃腸炎は全区で151件報告されています。 いずれも小松川地区での増加が目立ちます。 インフルエンザは東京都全体では1