AI処方と薬の副作用について考える
こんにちは、弘邦医院院長の林雅之です。本日のテーマは「AI処方と薬の副作用」についてです。 AIとは人工知能のことです。いまはコンピュータの検索や自動車、気象予報などさまざまな分野で使われていますが、医学にも使われ始めています。例えば、がんなどを調べるときの画像診断や手術のロボットなどにもAIが活躍しています。 今後、そのAIが活躍するとみられるひとつが、AI処方です。みなさんご存じの通り、病院でもらう薬は、医師が診察して必要とされる薬を処方してもらい、薬局等で買うのが一般的です。本来薬は、匙加減といってその人の体重、体調などによって処方を変えなければなりません。しかし、毎日大勢の患者さんを診る医師は処方も定型となりがちです。もし、AI処方になれば、いまよりずっと細かい処方が行われるはずです。例えば、患者さんのその人の血圧、血糖値、前回服用時の血中濃度などのデータをすべて入れて総合的な判断することでしょう。そうなると、薬の量はグッと減り、副作用も少なくなるに違いありません。また、患者さんの生活スタイルやバイオリズムにより、より薬の効果の出やすい時
なぜピロリ菌除菌が胃がんに有効なのか?
こんにちは弘邦医院院長の林雅之です。本日のテーマは「ピロリ菌と胃がんの関係」についてです。 皆さんのなかには「白い巨塔」という小説をご存じの方も多いでしょう。有名作家の山崎豊子さんの作品です。1960年代の作品で、大学病院の閉鎖的な世界を描いた小説です。主人公の天才外科医・財前五郎は自分の専門である胃がんにより亡くなるのですが、当時の胃がんは不治の病の代表でした。しかし、胃がんの多くがピロリ菌の感染が原因であり、そのピロリ菌を除菌すれば胃がんを予防したり、治したりできることが1980年代以降わかってきました。 通常、胃のなかは強い胃酸により細菌は生きられません。しかし、ピロリ菌は胃の中に住み続けられる稀有な細菌です。 ではピロリ菌はどのようにして胃がんを作るのでしょうか? ピロリ菌の表面には小さな注射針のようなトゲがあり、それを胃の細胞に突き刺してCagAと呼ばれる発がん性のたんぱく質を送り込みます。CagAに細胞内でリン酸が結合すると、細胞増殖を促す酵素と結びつき、細胞が異常に活性化してがんができるのです。 ピロリ菌は欧米人も感染しているのです