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新型コロナウイルス ビッグデータで闘う

17日放送のNHKスペシャル「新型コロナウイルス ビッグデータで闘う」について

 こんにちは弘邦医院の林です。本日の話題は17日午後9時からNHKで放送された「新型コロナウイルス ビッグデータで闘う」についてです。ノーベル医学・ 生理学賞を受賞した京都大学の山中伸弥教授や大阪大学の宮坂昌之先生など、民放では出演されない、専門家の先生がご出演されておられ、興味深い話をされておられました。ご覧になった方も大勢おられると思います。肺炎を起こす新型コロナウイルス感染症が最近になってなぜ全身の病気であると言われるようになったかなどを解説してくれる、とてもためになる番組でした。流石NHKさんです。

 ここで番組をご覧になれなかった人向けに解説しましょう。番組では新型コロナウイルスの報告から世界中の医師や研究者が発表した5万本余りの研究論文をAIにより仕分けして、感染の成り立ち等を分析したものです。それによると、新型コロナウイルスはACE2という細胞表面の突起物にウイルス表面のスパイクタンパク質が結合し、それが融解されることで細胞内に侵入します。細胞内に入るための入り口となるACE2はこれまで気道や口腔内にしかないと思われてきたのですが、心臓や腎臓、肝臓、精巣、卵巣など多くの臓器に存在することがわかってきたのです。驚いたことにこのACE2は血管内皮にも存在しており、血管内皮に侵入すると全身の血管を成している細胞に感染することになります。その結果、血管が血液を供給している全身の臓器に感染してしまうのです。

 さらに感染した細胞ごと新型コロナウイルスごと殺してしまおうと、サイトカインと呼ばれる主に免疫細胞から分泌されるタンパク質が攻撃を始めます。それにより、全身の血管の周りに炎症が起きます、それが行き過ぎると、サイトカインストームと呼ばれる状況になり、全身の臓器にダメージを与えることになるのです。そうしてついには全身の血管のいたるところに血栓ができてしまうのです。

 単に呼吸器の疾患と思われてきた新型コロナは感染からしばらくの間、感染を自覚できず、呼吸器疾患だけでなく血管の病気も引き起こす。なんとも厄介な未知なる病気なのです。

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