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塩分と高血圧について

こんにちは、弘邦医院の林です。

今日の診療は平常通り、午前・午後です。

さて、本日のテーマは「塩分と高血圧」です。

皆さんのなかには、「塩分を取り過ぎると血圧が高くなるからお味噌汁を控えている」という方も大勢おられるでしょう。血圧とは血管にかかる負荷のことで、血圧高くなると心臓や脳の血管が破れたり、詰まったりします。

 塩気の強い食べ物を摂ると、のどが渇いて水をたくさん飲みます。これは血液中に塩に含まれるナトリウム濃度が高くなり過ぎるため、水で薄めようと脳が指令を出すためです。そうすると体のなかに取り込んだ水が血液量を増やすため血圧が高くなるというわけです。もちろん、過剰に摂った水分がナトリウムと共に尿として排出されると、ナトリウム濃度や血圧は元に戻ります。

 とはいえ、同じ塩をとっても塩気を強く感じる人とそうでない人がいます。塩分を取ると誰もが血圧が高くなるというのは、本当でしょうか?

実は、塩(=塩化ナトリウム)を摂ると血圧が高くなるというのはすべての人に当てはまるわけではありません。塩の感受性が高い人は確かに血圧が高くなりますが、そうではない人は、血圧が上がるとは限らないのです。塩と血圧の関係はいまだにはっきりとした結論は出ていないのです。

 そもそも塩分を摂ると血圧が高くなると言い出したのはダールという人の疫学研究からと言われています。彼は日本やエスキモーの人たちの食生活を調べて、塩分をたくさん摂る地域の人たちは血圧が高いという図を作成し、発表したのです。彼はその仮説を実証するために、マウスを使った実験を行います。塩分を多く含んだ注射を静脈に行い、マウスの血圧を測定したのです。その結果、塩を摂ると血圧が高くなるマウスとならないマウスがいることを発見、その後別の研究グループが、高血圧ラット同士の交配により塩の摂取量にかかわらず高血圧になって脳卒中を発症するラットが作られたことで塩を摂ると高血圧となり脳卒中などのリスクが上がると言われるようになったのです。

 ところが、そもそもダールの疫学研究は調査対象数が少なすぎる、男女比、年齢などバラバラでなぜその地域を調査したのかもわからないつっこみどころが満載のデータだったのです。そこで32カ国52カ所、1万人超を対象とした大規模な「インターソルト・スタディー」を実施したところ、食塩を多く取る日本は中国の高血圧症の患者の割合が10%程度なのに対して食塩をあまり摂らない欧米の方が高血圧症の有病率が20~30%というまったく逆な結果が出たのです。1日の塩分量が6~14gの人たちは塩分摂取量と高血圧との相関関係がないこともわかり、「それでももっと減塩しろ」というのは合理性がないという意見がでているのです。

 しかも、世界的に権威のある医学雑誌「ランセット」には25歳~75歳までを対象とした米国の栄養調査によると、食塩摂取量が最も多いグループは死亡率が最も低く、狭心症と心筋梗塞などの死亡率は食塩摂取量が低いグループほど高かったのです。

本当に塩は悪者なのか? その議論はいまも欧米で活発に行われており、結論はまだでていません。ただ、塩分=悪者論に懐疑的な意見が増えつつあり、どうやら減塩は必ずしも全員に必要なものではなさそうだ、ということになっているようです。塩分を気にしてお味噌汁などを控えると栄養バランスが崩れるという意見もあります。皆さんはどう思いますか?

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